劣化ウランの恐怖
これはフライデーに掲載された『劣化ウラン弾の恐怖』という記事からの写真である。先の湾岸戦争では劣化ウラン弾(Depleted Uranium Weapons, DU)が使用された。一般に知られるウランはU238であるが、原子炉に使われるウランは同位体のU235である。ところがU235は自然界には0.7%しか存在せず、原子炉で使用する比率を高めるために濃縮という作業が必要となる。使用できる部分を濃縮した後のU2350.2%とU238の混合物が劣化ウランである。劣化ウランはプルトニウムにも転用できるがコストがかかり過ぎ、かつては使い道のない放射性廃棄物に過ぎなかったが、原料費がただ同然であることから数年前より兵器に使用されるようになってきた。ウラニウムは原子数が多いため重く頑丈であり、戦車の装甲や対戦車砲などに使用されている。劣化ウランの装甲はどんな攻撃にも耐え、劣化ウラン弾はどんな装甲も打ち破る対戦車砲と言われ、これを使用するか否かが湾岸戦争の勝敗の別れ目ともなった。この物質同士をぶつけた場合どうなるかというと、劣化ウランの装甲を施した戦車に劣化ウラン弾を誤射した場合は装甲を貫通している。劣化ウランの最大の問題点はリンのように燃えやすいということである。特に戦車などに当たった場合は燃料に引火して燃焼する確率が高くなる。劣化ウランは燃えるとエアロゾルというミクロン以下の微粒子の状態になるが、エアロゾルは体内に入ると肺や肝臓にとどまりやすく、特に5ミクロン以下の微粒子は半永久的に体外へ出ない。このエアロゾルからは微弱な放射能が出続け、その量は年間1360レムと言われているが、これは許容量の8000倍の数値である。劣化ウランは数年前からアメリカ国内で問題となっていたが、ここ数年アメリカの兵器産業は活発であり、この劣化ウランの装甲を施した戦車もボスニアなど世界中に輸出されており、影響が懸念される。また劣化ウラン弾が燃焼した結果のエアロゾルは戦場から数十km離れているところへも飛ぶことがあり、異常児の誕生や癌の発生率の上昇、肺や肝機能障害などの報告がなされている。
湾岸戦争の後、米軍兵士のあいだに疲労しやすい、癌になりやすい、帰国直後にできた子供に異常が現れるなどの原因不明の現象がおきた。アメリカの公的機関は、湾岸戦争直後にはその報告を公開しなかったが、ミシシッピの民間団体が調べたところによると二百数十人の子供のうち60%が失明、無眼球、失聴などをともなった異常児であることがわかった。しかしその原因までは不明であった。
ところが昨年、化学的な複合汚染が原因ではないかという説が浮上した。当時の米軍は殺虫剤であるuswを大量に使用し、薬品を無断で人体実験につかい、またイラクの化学兵器(サリンを含む)が工場や貯蔵所から漏出していたのだ。CIAの報告ではサリンに侵された兵士は3000人だというが、米兵とイラク人をあわせて12万人に神経ガスの影響があったと言われている。
劣化ウランの影響もあった。燃えた戦車の映像には劣化ウランを使用したあとが見つかっている。使用された劣化ウラン弾の70%以上が発火したという報告もある。少なく見積もっても300tの劣化ウラン弾が使用され、もしそのうち燃えたものが1〜2%としてもすごい量のエアロゾルが発生したと考えられる。米軍兵士のほとんどは吸引したかもしれない。
イラクでは羊に異変がおき、人間の子供の先天性異常や小児癌も増え、子供の死因としての小児癌の順位は7位から4位になった。